news

【店主note】くさってもしょーがないので、じぶんでいる

火曜・水曜と定休日でお休みさせてもらった。お休みしていたこの2日間何もしていない。
文字通り何もしていない。インプットもアウトプットもしていない。
心踊る事も、脳内爆発する事もなくただただ時間が流れていった、そんな休みだった。

世間は月曜日の夜、私的には仕事が終わって明日から週末になるので金曜日の夜と一緒。
明日から何しようかな?と考えもしたけども、今週はとにかく写真集から離れようと思った。
携帯すら見たくないし、情報を何もいれたくなかった。

写真集を見る以外に何かやりたいことあったっけ?と思考を巡らすも、写真集以外に何も心踊る事が思い浮かばず、そんなこんなであっという間に2日間を過ごしてしまった。

***

 普段、水曜日はお店を閉めていても中で仕事しているので2日間丸っと休んだのはお店をOPENさせてから初めてのことだった。
何もやっていないという事に少し不安になり早い時間に出勤してみた。
早く出勤して、未読の数字が増える一方の受信フォルダーを処理して、何をする訳でも無く店内をウロウロした後に掃除を始めた。

毎晩、店内の真ん中にある大きなテーブルに広げている写真集を閉じてから帰るので、今日は開くところから初めて見た。
開くページは解っているのに、時間はたくさんあるので1p1p眺めてしまっている自分がいた。

人がいっぱいいる。
この人はもういないのかな。生きているのかな。
キレイな国。キレイな家。キレイな光。

写真集を見ていると、いかに自分の心が渇いていたのかが解った。
喉が渇いていたかのようにグビグビと写真集を心と脳に飲み込んでいくような気分だった。
心と脳に溜まった多くの情報が、胃もたれのような現象を起こしていたのかもしれない。
この2日間で全てを無意識に咀嚼していたのかもしれない。

更に何かを欲したのか、その後もテーブルから棚に並んでいる写真集を1冊1冊拭いてみた。
お店に並べてあるセレクトされた写真集をじっくり見ていると、「あぁ常備薬だわ。」と思ってしまった。
写真集はお薬。お店を開いてからずっと言っている言葉だ。

写真集は文章が無いので、理解する前にダイレクトに心や脳に飛び込んでくる。
良い写真集程、心が躍ったり、息が出来なくなるほどの衝撃を与えてくれる。
脳内が事に理解出来ず目を閉じても消えない写真作品に戸惑いすら感じるのだ。

もしこの写真集達を開いていなければ、いつも見ている景色が美しいという事にも気がつかず、そういった視点もあったのか!とも気がつかず、一生出会う事が出来ないであろう外国の人々や景色にも歴史にも出会えずにいた。
そして、「美しい」といった様々な感情の幅を生み出せていなかった。

写真家さんたちには感謝しかない。私の常備薬になっているのだから。
1冊1冊拭きながら、本当に良い写真集だわー。と独り言。なんだか心が癒された。

***

先ほど、ルイジ・ギッリの写真講義が売れていった。
「1回読んだけど、また欲しくなっちゃって。」とお客様は笑っていた。
「良い本ですよね!あそこが!」なんて話して、白いカバーは汚れやすいので透明のカバーをつけさえて貰って、「ありがとうございます!いってらっしゃい!」お客様をお見送りした。

私も写真を知る上で大切にしているギッリの本を小脇に抱えたお客様の背中と、ギッリが無くなって空間があいたテーブルが視界に入った。
寂しいけど、嬉しいの方が大きい。だって良い!が通じる人がいたんだもん。
ギッリのあの本をやっぱり手元に置いておきたいと思ってしまう人に出会えて、そんな人の本棚へ嫁いでいった本を見るのは嬉しい。

日々「売りたくない」「売れちゃった」と言っているのは、本当に良い写真集や本だから。
そう言ってしまうほど、本当に良い写真集や本だから。薬にもなって、心を育む写真集にもなるから。
「売りたくない」「売れちゃった」と言っている写真集程、太鼓判以上の賞賛以上の何かがある。
知らない人は知ってほしい。私もたくさん写真集に救われたし、育んで貰えた。

1冊の写真集がお客様の癒しに、希望に、生きがいになったら嬉しい。
そうなる為に、出会う場を維持して、たくさんの写真集の勉強をしなければ。

売りたくないけど、お客様が写真集キチガイが「売りたくない」言っていたほどの写真集なのだと思って貰えたら嬉しい。
写真集を広める為にたくさん理解して、写真集を知ってもらって、写真集の歴史を次の世代に残すのが私の使命だと思っている。

何も出来ないかもだし、ただ小さな世界で叫んでいるだけかもしれないけど、やっぱり良い写真集だから声を大にして、良い!!と言い続けます。常備薬がどんどん嫁いでいくのが寂しいし不安にもなるけどね。

また新しい常備薬となる写真集に出会えるだろう。それも楽しみで。楽しみで。

***

なんか長く書いてしまったけど、様々な媒体で当店を紹介して頂く中で私の思いを100%書いてみようと思って。

先日開催していた、熊谷聖司さんの展示にあった
「くさってもしょーがないので、じぶんでいる」
を、体感したそんな2日間の休みでした。

また改めて、熊谷聖司さんに会えて、展示出来てよかったとも思った。

今日も写真集に発狂をしています。吉祥寺の井の頭で。

熊谷聖司さんの展示にて。

店主noteのバックナンバー
https://bookobscura.com/news/5aea9a18122a7d1f480004fa