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【店主note】ただの決意表明?

2020年を目前にした、店主のMY写真史を書き加えていて手が止まった....というか思考が止まりました。

それは、現代の写真家さんを書き加えたていた時に「写真家さんの写真を見て、写真家になりました!」という人が少なくなってきているなと思った瞬間でした。

現代の写真家さんを分析していると、影響されたものが映画、TV、音楽、目にしない日は無いって位にどこにでもある広告たち。電車の中吊り、駅の広告などなど、多種多様な情報が錯誤する時代だからこそ、現代の写真が写真史だけでは繋げられない次元になってきたなと思ってしまいました。

もちろん、これまでの写真を解析するにも、映画や音楽など大事な要素でしたが、現代の人たちの目に入ってくる情報のジャンルが多すぎて、様々な分野の年表が必要になってきているのです。

私はそんな現状にワクワクして、ドキドキして、どんな写真史になっていくのか楽しみでしか無いのです。

そんな事でワクワクしていたら、過去の写真と現代の写真を見比べる日々になり、自分の立ち位置や、やっていたいことが明確にもなりました。

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この頃、家の前の道路がずっと工事中でして.....そこから私のタイムスリップが始まりました。

コンクリートをベリっと剥がして、また新しいコンクートを均すという作業の繰り返し。あまりのベリっと感が面白くて、ついつい夜は観察してしまっています。

観察していて、ふと思ったのが「いつの段階でコンクリート道路に変わっていたのだろうか。」という事。

この道も、掘れば土な訳で、その土だった時代はいつなのだろうか。今はコンクリートに舗装された道路が当たり前で、自動車も当たり前で、ビルなどといった高層建築物も今では当たり前ですが、いつから当たり前なのでしょうか。

ざっと興味が湧いて調べてみたら、東京は1923年に起こった関東大震災の影響で道路は一気に舗装が始まったそうです。

1950年代から70年代にかけて、自動車の保有台数が飛躍的に増加し、道づくりも大幅に進んでいったそうですが、これまで無かった排気ガスの問題や騒音、交通事故など新たな問題も生み出していきます。

コンクリートに舗装されていく街を見ながら、空に届きそうな程の高さの建築物を建てる工事現場を見て、人々は何を思ったのでしょうか。急激に変わっていく街の姿を見て当時の人は何を思ったのでしょうか。

1930年代は木村伊兵衛さん
1970年代は森山大道さん

と考えると、大御所のみなさんの時代はコンクリートをガンガン叩いて「道をつくっていくぞ!!!」と、汗水たらす時代だったからこそ、写真1つ1つが力強いのかなんて改めて納得してしまいました。

"宙に浮く車" が未来では普通になっているのではないかなんて想像してしまう位、急速に日本が成長していくと同時に、その影響で「四日市ぜんそく」や「イタイイタイ病」などの公害病も生まれ、新しく巻き起こる想像していない問題にも直面していた時代でもあります。とても怖かったと思います。

産業革命、経済成長、自分たちで変えていくんだ!という力強い毎日と、混沌、不安、抗えない、止まらない、大きな作用に巻き込まれていくような毎日。

同じ国の話で、当時の日本人が日々悩んでいた内容なのに、もう全て当たり前にある現代で生きる私には想像出来ない世界だなと思ってしまいました。

現代の写真とこれらの時代の写真が違って当たり前です。悩みが違えば表現も変わって来ます。写真が変わって当たり前です。だって直面している悩みが違いすぎますもん。

写真の世界では「私写真」という言葉がありますが、私写真も日常という言葉も激しく変わり始めてきているように思うのです。

1992年に日本で初めてのインターネットサービスが始まり、1996年にYahoo!がサービスを開始、1999年に「iモード」が始まり、やっと携帯でも調べる事が可能になります。

インターネットもSNSも存在していないそれまでの人たちは、プライベートをどこかにさらけ出す必要もそんな場所も無く、家の中、友人関係、旅行先など写真に撮って知人に見せるか、写真集を作るかだけ。

芸能人ほどでは無いですが、現代の人はプライベートを切り売りする時代に変わっています。心のすり減りかた内容も、悩みも昔と比べると恐ろしく違うのです。

そんな現代の人たちが生み出す写真は違ってあたりまえです。
違うという言葉が違うのかもしれません。
現代に生きる人が生み出しただけの事。
現代で悩み、生き、楽しんでいるだけのこと。

先人の、偉大な大御所さんの写真も素晴らしい。
現代に生まれた新しい写真家さんの写真だって素晴らしい。
どんな時代の写真でも、感動する写真はある。

私は、どんな時代の写真でも、それぞれの写真の生まれたそのままの形を慈しんで、愛でたおしていきたい。

これからも写真や写真集、写真家さんや写真史のビックファンという立場で写真の世界を見ていたい。
ファン過ぎて写真に関わる全ての事実を解析して、研究した後に記録していくという、ただのヲタクのままでいたいなと。

私の神棚には、たくさんの写真や写真集、写真家さんや写真史が並んでいて、いつも拝んでいたいただの店主の雑文でした。

/////過去の店主note /////
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