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【gallery】柏田テツヲ 写真展『Into the Gray』

柏田テツヲさんの3作目となる最新刊『Into the Gray』の刊行を記念して写真展を開催致します。

留学していたこともある馴染みの国の大きなニュースは、柏田さんの衝動を突き動かしました。

知っているからこそ、数々の記憶があるからこそ、柏田さんの目で捉えてきた思いと記録を是非その目で体感しにご来店下さいませ。

展示期間中には、ZOOMを使ってのオンライントークイベントも開催致します。チケットをご購入頂いたお客様には当日参加のURLに加えて、3月28日(日)まで閲覧可能なURLをアップロード次第お送りさせて頂きます。

/////開催概要/////
柏田テツヲ 写真展『Into the Gray』
期間:2021年3月11日(木) - 4月12日(月)
営業時間:12:00〜20:00
定休日:火曜・水曜日

/////オンラインイベント概要/////
ZOOMを使用してオンライン上でトークイベント開催致します。

柏田さんのこれまでを紐解きながら、辿り着いた『Into the Gray』の経緯を伺って行きます。

オーストラリアで何を見て何を撮ったのか。
何を感じ、何を思い、何を考えたのか。
柏田さん自らが出版した同名の写真集を閲覧しながらその時の記憶を遡っていこうと思っています。

当日は予定があって見れない可能性があるお客様でも安心して閲覧出来るよう、チケットをご購入のお客様には、3月28日(日)23:59まで視聴可能なURLを配信完了次第お送り致します。

話し手:柏田テツヲ(写真家)
聞き手:黒﨑由衣(bookobscura店主)

日時:2021年3月20日(土) 20:00-21:30
開場時間:19:30
開催時間:20:00-21:30
場所:ZOOMでの開催
※参加お申込後にURLをお送りします。
参加費:¥1000(税込)
決済:以下URLのページにて決済をお願い申し上げます。
https://bookobscura.com/items/60498b5a3186252a2e32c9c2

2020年1月11日、私は空を覆い尽くす灰色の中にいた。

オーストラリアは2019年9月から2020年2月にかけて南東部を中心に過去に類を見ないほどの大規模な森林火災に見舞われた。

森は焼け落ち、見渡す限り遥か遠くまで真っ黒な木々が立ち並ぶ。人も動物の気配も無い。静まり返った森の奥から、焦げた香りだけが風に運ばれてくる。川の水は焼け焦げた炭の蓄積で黒く濁って流れている。

森の中に続く長い一本道はまるで違う世界へ誘う導線のようだった。

真っ黒な木々と灰色の空との綺麗なコントラスト。焼け焦げた木々の幹のデティールは魚の鱗のように黒く綺麗に輝く。川に映り込んだ黒い木々の幻想的な波紋。

全て色が抜け落ちた世界。

それらの光景は絶え間なく森林を燃やし続け、世界の終わりを迎えるような真っ赤に燃え上がる炎の光景でもなければ、雨が降り炎が鎮火し青空を迎えるような光景でもない。

私が目にした光景は、火災が鎮火に向かいつつある中でのほんの短い期間に過ぎない。しかしその光景のどれもが私の目にはとても美しくも見えてしまった。

今回の森林火災では小さな町や村まで火の手が押し寄せ、たくさんの家などを焼失させた。

訪問中に出会った家族は火災当時のことを私に話してくれた。

『電信柱は燃え、電気は止まってしまった。火は私達が住む家の庭まで押し寄せ、家に火が燃え移らないように家族みんなでホースやバケツで水を何時間にも渡り撒いていた。ここに住んで半世紀になるが、火がこれ程近くまで来たのは一度もない経験だった。自然と共に暮らしているが、火がこんなにも私たちの生活エリアまで脅かしてくるとは思ってもいなかった』

私が過ごした灰色の中の光景は、再びその地を訪れる頃には青空を迎えていた。幹からは青々とした新緑が芽生え、人々も元の暮らしを取り戻すよう呼吸をしていた。

しかし失われたものも確かに存在している。

今も尚世界の何処かでは都市開発のために森林は伐採され、経済発展のために大気中の二酸化炭素は増加している。暮らしの豊かさの先には代償があるのだ。そしてその代償は発展とは程遠い大自然の森や自然と近い距離で暮らしている人々に降りかかる。

私が美しいと感じてしまった灰色の中に幾つの色が隠されているのか私自身も知らないままでいる。

色を失った世界でさえも自然はこうも美しさを私達に見せてくれるのだろうか。

txt : 柏田テツヲ

/////書籍情報/////
Into the Gray / 柏田テツヲ
https://bookobscura.com/items/604992b9c19c4526148e5cc3

出版社:自費出版
サイズ:H265xW210(mm)
ページ:128ページ+ブックインブック16ページ
販売数:Edition 400冊

/////作家プロフィール/////
写真家
Tetsuo Kashiwada
柏田テツヲ

旅をしながら自身が出会い、感じ、疑問に思ったことを独自の視点で写真を通して定義している。
主な作品集に「MOTEL」「STRANGER」などがある。
1988年 大阪府出身
2019年 写真新世紀 佳作
2020年 写真新世紀 佳作, 第22回 写真「1WALL」入選