
【店主note】店主の研究展 Rat Hole Gallery / Hysteric にあたり
「Rat Hole Gallery」は表参道に2006年から2020年の間にあったギャラリーで、ファッションブランドの「HYSTERIC GLAMOUR」が運営していました。写真集やアートブックの刊行は1990年代から行われており、「HYSTERICシリーズ」と呼ばれている写真集が得に有名で、森山大道さん、奈良原一高さん、植田正治さんといった重鎮たちの写真集を作っていました。
本展を楽しんで頂く前に、少し一緒に時代を遡ってみましょう。
「HYSTERICシリーズ」が始まる1990年代。
インターネットが一般的に普及するのは2000年代に入ってからなので、まだ携帯機器で検索する時代ではありません。そのため紙の媒体で情報を得ることが多く、1987年にはEsquireの日本版が刊行され、Studio Voiceは10万部発行され、これまで企業の広告撮影がメインだった写真家たちも雑誌で活躍し始めるほど、1990年代は雑誌が盛り上がった時代でした。カルチャーの普及が強くなった時代とも言えますね。
そんな中で、インディペンデントの出版も多くなりました。ファッションブランド「HYSTERIC GLAMOUR」が1991年に最初の「Hysteric」を、 広川泰士さん, 蓮井幹夫さん, 奈良原一高さんらと刊行します。
現代は「Supreme」をはじめ、「UNIQLO」などでも、アートとアパレルのコラボレーションは当たり前になりましたが、当時アンディー・ウォーホルともコラボしていた「HYSTERIC GLAMOUR」はとても早かったと思います。もちろん、シャネルやイブサンローランなどの大手のブランドは別ですが。
「HYSTERIC GLAMOUR」がアートとコラボすることで、大手ブランドを買えない若者がアートに触れるキッカケになり、森山大道さん、荒木経惟さん、深瀬昌久さんなどといった写真家さんが、これまで接点がなかった若者に知られていきました。そうして写真の魅力に気づいた、当時20代だった若者は今では50代。森山大道さんを含め、いわゆる大御所の活動を支えたのも彼らだったのでしょう。老若女男に関わらず、普及をすること、流通をさせることで繋がる歴史が確かにあった1つの真実だと私は思います。
1990年代にスタートした「HYSTERIC GLAMOUR」とRat Hole Galleryが作り出してきたものを、あらためて感じるとともに、当時刊行された写真集が今へと繋がってきたことと同じように、この展示が新たな未来へと続いていくことを祈って短い期間ながらこの研究をはじめます。
今回このような研究が出来るのは、「twelvebooks」さんが「Rat Hole Gallery」の閉廊にあたり、抱えていた在庫を未来に残すために受け継いだことで生まれています。これから、当店には現在展示出来ていない作品も再度、陽の目を浴びる日がくるでしょう。その前に少しずつ「Rat Hole Gallery」と「Hyteric」を知る日にしてみてください。
それでは今日も。
写真集愛はじめます。
店主