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【店主note】父の写真

大人になるまで父が撮影した写真が良いと思った事は無かった。

父は別に写真の仕事をしている訳ではなく、写真は趣味の範囲の人で、何より家族の写真を撮るのが大好きな人。

おかげで我が家のアルバムは何冊もあって、背表紙に手書きで私の名前が書かれた、私が被写体のアルバムは7冊にも及び、それらは嫁入りの際に持たされた。

写真が身近にあって写真を観る機会は多かったから、紛れもなく写真を読むベースは父の写真なのだと思う。



数年前に父が仕事の資料で撮影していた写真を見つけて、初めて感動した1枚がこの投稿の写真。

あまりにもこの1枚は私の父そのものだった。
父や夫などの肩書ではなく、父そのもの。
昔らしい大黒柱の威厳はあるけど、優しさ溢れる人間。

「これ何?」
と聞いても、
「それは報告書の為に撮らなきゃいけなかったやつだから。何でもないよ。」
と、だけ。

父は解っていなかったけど、「誰か」の姿や形、「誰か」との時間、「誰か」との思い出を意識して撮っている1枚じゃないから、「何でもない」=「己」でしかない写真なのだなと思った。

無意識の際に出て来てしまうモノはやはり本人自身なのだなーっと感じつつ、この1枚が家族写真には写っていない父過ぎて好きだなと。

己の内側から撮れていると言えば解りやすいのだろうか。



写真を観る能力は、私の先天性の能力と、父が無言で残して来た家族写真で育ったのだと思う。

写真を残すって本当に大切な事だなと改めて理解しつつ、無意識に出て来るモノの視覚表現って恐ろしく面白いなと。その人でしかなくなる瞬間があまりにも無垢で原石で、何よりも美しい。

写真って凄い。

父は全く撮らなくなったけど、今度実家に帰る時は父にカメラをプレゼントしてみようかな。。。

これから父は何を撮って来るのだろうか。