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【gallery】村越としや 「こぼれ落ちる言葉はやがて海に還る 」

村越としやさんの最新刊『こぼれ落ちる言葉はやがて海に還る』の発売を記念した展示を開催致します。

これまでに、生まれ育った「福島」を様々な形で残してきた村越としやさん。最新刊では「海」という視点から、新たな「福島」を垣間見せて下さいました。

地表にはマグマ、大気にはガスが覆い尽くしていた46億年前。地球は急激に温度が下がり、大気に含まれていた水蒸気が1000年続く雨となりました。それが原始の「海」という形になりました。雨と一緒に塩酸なども流れ込んだため原始の海は酸性で、とても生物が育つ環境ではなく、3億年という歳月をかけて現在のような中性の海となります。

43億年もの間、存在し続けている海からすると3億年という時間は微々たる時間だったかもしれませんが、100年ほどしか生きられない人間からすると3億年という時間はスケールが桁違いです。そんな海を、村越としやさんは東日本大震災の翌年から津波の到達地点よりも高い場所の決まった位置から何年も撮り続けていました。

東日本大震災における原子炉の問題を考えるとまだ解決された訳ではなく、これからも長い時間を掛けていく必要があります。廃炉という目標までにかかる時間を考えると、生物が育つ環境になるまで3億年もの時間がかかった海そのものの時間軸が想起され、この問題は我々が想像している以上のスケールだと理解出来ます。

海から考えて人間の1日や1年はなんの変化もないのかもしれません。そんな変化もなく、長い歳月がかかる風景という「海」に村越さんは何を見たのか。

本展示では、15点の作品が蛇腹に製本され収録されている写真を全て広げ、村越さんが見つけようとしていた「出来るだけ変化が少なく、出来るだけ長い歳月をかけて撮影し続けることの出来る風景」を一連にして展示することで、何が見えてくるのかを試みます。

最後には1枚オリジナルプリントを飾り、写真集によって作られた流れと、1枚の作品による時間の違いも見ていきます。

特別に写真集を制作する際に作られた刷版(PS版)の販売の他、村越さんの過去の写真集も販売致します。

全長10mを越える写真集を波の形にして一連で楽しむ機会となりますので、是非足をお運び下さいませ。

/////開催概要/////
村越としや 「こぼれ落ちる言葉はやがて海に還る 」
期間:2025年4月24日(木) - 2025年5月26日(月)
営業時間:12:00-19:00
定休日:火曜・水曜日

/////オープニングトークイベント/////
写真家・村越としやさんを迎え、最新刊の制作秘話や、本作品についてなどを伺いながら写真集と写真を深掘りして参ります。

なお、本イベントは先着15名様のみ店頭観覧にご参加いただけます。観覧希望の方は、弊店メールアドレスにご連絡をいただくか、店頭でご予約ください。book obscuraのyoutubeチャンネルでのLIVE配信も予定しています。いずれも参加費/視聴は無料です。こぞってご参加ください。

4月24日(木) 19:30-21:00
出演:村越としや(写真家)/黒﨑由衣(book obscura店主)
参加費:無料
場所:book obscura/同店YouTubeチャンネル
URL:後日更新

/////書籍概要/////
「こぼれ落ちる言葉はやがて海に還る 」
村越としや
¥16,500-(税込)

サイズ:W357×H246mm
頁数:32
製本:布クロスハードカバー、蛇腹製本、スイス装、背に箔押
表紙仕様:布クロスにオフセット印刷
用紙:MTA+-FS
解説:広川泰士 小高美穂
デザイン:加藤勝也
エディション:450+AP50
印刷:サンエムカラー

////作家プロフィール/////
村越としや | Toshiya Murakoshi

1980年福島県須賀川市生まれ。
故郷の福島県を主な被写体に選び、人の持つ潜在的な記憶と自身の記憶、そして土地の記憶をなぞるように継続的な撮影を行う。 2011年の東日本大震災以降はより重点的に福島の撮影に取り組み、写真術を用いて風景の変化と矛盾、人々の視覚的な認識の違いなどを見出だそうとしている。これまでに多くの写真集を出版し2009年には自主ギャラリーを設立するなど、写真を発表する手段、場についても意識的である。日本写真協会賞新人賞(2011年)、さがみはら写真新人奨励賞(2015年)受賞。東京国立近代美術館、サンフランシスコ近代美術館、福島県立博物館、相模原市に作品が収蔵されている。