【店主note】EARLY WORK / Stephen Shore
2025.10.13
やっぱり刊行というか発表するタイミングって大切だよな。。。
ショア様の最新刊『EARLY WORK』。
私の1番好きなスデックの『FOTOGRAFIE』の版形に近く、カバーを外すと出てくる麻のゴツゴツとした布装も似ていて、流石に表紙にタイトルが箔押しでは無かったのですが、黒いタイトル文字を観ていると安心感を覚えました。
今回は全ページがモノクロ写真で構成されていて、ショア様のモノクロ写真は写真集で言うと5冊ですが、全部がモノクロの写真集は2冊。ということで珍しいです。。。
しかも今回は、ウォーホルのFACTORYの時のように動きのあるストリートスナップに近い写真であり、どっしりと広く絵画のように構成していない写真と言ったほうが解りやすいかもしれないですね。
撮影は1960-65年ということは、13歳〜18歳という事実に目がくらんできますが、ショア様は6歳で暗室を始め、14歳で当時ニューヨーク近代美術館MoMA写真部門のディレクターであったエドワード・スタイケンに写真を所蔵品として3枚購入して貰っているので13歳!?と驚くにはまだ早く・・・本書はそんなスタイケンに写真を購入して貰った時代に撮影していた写真となります。
ショア様は、MoMAディレクターのスタイケンに自ら電話して写真を観てもらう日程を掴んでいるほど積極的な人でもあることから、写真を見る目を持った多くの大人たちが周りにいたと思います。
となると、14歳の鬼才現る!というキャッチコピーで展示をしたり、写真集を刊行していそうに思うけど、ショア様や周りの大人たちは刊行しませんでした。
スタイケンは「あの子供を見逃すな」と、後にエグルストンのGuideを企画するジョン・シャーコフスキーに伝言を残したのみでした。
なぜ、発表も刊行もしなかったのか。
1960-65年を考えてみると、ロバート・フランクの『The Americans』が刊行されたのが1958年(フランス)と1959年(アメリカ)であり、少し前の1952年にはブレッソンの『決定的瞬間』が刊行され、1956年にはエルスケンの『セーヌ左岸』や、ウィリアム・クラインの『NY』も刊行され、1967年にゲイリー・ウィノグランドやリー・フリードランダー、ダイアン・アーバスが選出されたニュードキュメント展が開催されていることから、60年代は恐ろしい化物たちが乱立しています。
尊敬してやまないアメリカの写真史を語るうえで最重要のウォーカー・エヴァンス、今日もその光が絶えないロバート・フランク、アレブレボケの創設者ウィリアム・クライン、ノー・ファインダーのゲイリー・ウィノグランド、コンポジション魔神のリー….そしてコンセプトが強すぎるダイアンという大人たちが身近にいると思うと吐き気でしかありません。。。
ショア様の『EARLY WORK』の中に、タイル壁面のアパートメントにアメリカ国旗が飾られていて、犬が窓越しにこちらを見ている写真があります。
フランクの『The Americans』の最初の1枚の写真に似ていて、フランクがあの1枚というか・・・作品として何をしていたのかを考えると、冒頭でグッと掴んでくる1枚であり内容の深さがある写真になっています。
本書を読んでいると、とてもフレッシュで、写真を撮ることが楽しい!という思いが通じるのと同時に、多くの写真集をたくさん観たのだろうなという事が解るのです。
10歳の頃にはウォーカー・エヴァンスの『American Photographs』をプレゼントされているぐらいなので、それはそうか。
私が15歳でクーデルカの『GYPSIES』に出会ったなんて、なんの自慢にもならないお話です。
もし、『EARLY WORK』を当時発表していたらと考えると、前述した通りの作家たちの写真と見比べられることとなり「で、君はこの写真でどんなことを言いたい、残したいんだい?」「アメリカのどんなお話なんだい?」と聞かるかと…..。
スイス人でありユダヤ人のフランクが成し遂げたこと、クラインがNYの街並みで成し遂げたことを考えると少し弱いように思うのです。
本書の写真集のタイトル『EARLY WORK』というタイトルそのものも、ショア様のこれまでの写真集内で仕掛けてきた、キャプション芸などは無いことから既存の作品との境界線を伺えます。
ショア様の恐ろしいことは、この時代の後にウォーホルのアトリエに入り浸る所もそうですが、ニューカラーという時代が始まる1970年代に、再解釈の「アメリカ」をしっかり制作して来たことのように思います。
どうしたら先人や先輩と被らずに、どうしたらアップデートが、写真の可能性はどこなのか。
カラーで、大判カメラで、絵画的に、美術館に飾られる写真、第一印象であるヴィジュアルとしての写真から内容への持って行き方、そして内容の深さ。
ショア様の選択1つ1つが『EARLY WORK』があったからこそなのだなと。
ショア様が見た目だけでは語ってはいけない作品を作っているのは最初からではなく、段階を経てなのだと伺えてよかったと.....。
また鬼才エピソードになってしまうところでした。
確かにどのページも素晴らしいモノクロ写真なのですが、60年代に出していたら。。。
発表する、刊行するという時は、自分の「写真」や「文脈」での立ち位置と、自分の周りの状況や、社会の状況を客観視する必要があります。
世に出す。というのは「責任」が生まれてしまうことだからです。
13-18歳までのショア様を消費する大人がいなかったことを含めて、ショア様は本当に写真界に大切にされた人なのだろうと思います。
良い写真が撮れるようになった先に何が出来るのか。何をするべきなのか。
本書を持っていることで、ショア様の作品全てがより深くなったように思います。
