【gallery】富澤大輔 写真展『新乗宇宙』2020.10.22-11.9
富澤大輔さんの待望の新作『新乗宇宙』の刊行を記念して写真展を開催致します。
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「新乗宇宙」は台湾の岐路となる選挙が近づく日々に緊張と憂鬱をいつも頭のどこかに抱えながら、生まれ育ったその土地を撮影した作品である。
この世界の大きな流れの中で我々はどうすることもできないかもしれない。しかし変わり続ける世界を感じ、解釈しどのような評価を下すかを考えることで、その先の先に微弱ながらも変化を生むことは可能だ。たとえそれが大河にバケツで臨むようなものだとしても意味のない事ではないと信じている。ただ流されるのと、自らがその流れになっていくのとでは雲泥の差なのだ。今の僕には写真を撮ることしかできない。しかしそれを続けることに何らかの意味があると思うのである。
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/////開催概要/////
富澤大輔 写真展『新乗宇宙』
期間:2020年10月22日(木)〜 11月9日(木) 12:00-20:00
※火曜・水曜日は定休日
/////書籍情報/////
『僕はこの当然の「権利」に、胸が誇りでいっぱいになった』
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2020年1月11日。
香港でのデモが日々続き、
未知のウイルスの存在に少しずつ世界が視線を向け始めた頃、
台湾では『中華民国総統選挙』が行われた。
この選挙は台湾の事実上の独立状態を継続する姿勢の民進党と、
中国(中華人民共和国)との関係の強化を主張する国民党の
どちらが選ばれるかという大きな岐路に立たされたものだった。
台湾人の父と日本人の母の間に生まれてから16歳までを台湾で過ごした富澤は、
選挙が近づく日々に緊張と憂鬱をいつも頭のどこかに抱えながら、
生まれ育ったその土地を撮影した。
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いま、あらゆる言説が私達を“大きな主語”でくくり分断する。
「あなた」が「あなた」でなくなり、
「わたし」が「わたし」ではなくなっている。
政治は私達の「外側」にある気がする。
本来極めて個人的な私の中に存在する、私という「政治」を見失う。
この本は、あらゆる“小さな主語”の中にしかない目に見えないことを、
気づかせてくれ、忘れさせてくれ、また思い出させてくれる。
巻末には中国人の韩梅梅による短編小説、『傍晚五点的对话』を収録。
2020年、台湾・中国・日本それぞれに過ごす「わたし」による視線が幽かな交錯をした一冊になっている。
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◎韩梅梅『傍晚五点的对话』◎
中国のどこかにある「晏州」――。
「国内の循環を主体に経済発展を」というスローガンもと、
気づくと町は静かに着実に変わっていっていた。
そんな町に、それぞれ留学の経験を経て帰ってきた「アリ」と「ダチョウ」。
これはそんな二人の、フィクションより奇妙な日常の夕暮れ時の立ち話。
写真集『新乗宇宙』
写真:富澤大輔
文:韩梅梅『傍晚五点的对话(午後五時の立ち話)』
デザイン:浅田農
翻訳:廣谷妃夏、林暉鈞
言語:日本語・中国語
判型:210 x 276 mm(A4判変形)
総頁:136頁
製本: 並製本
定価:4,100円+税
/////作家プロフィール/////
富澤大輔
1993年 台湾/高雄
2013年 千葉県立幕張総合高等学校卒業
台湾に帰省 旅館で住み込みをしながらテキ屋に混ざり屋台を引く
深山にて茶器を焼く手伝いの最中、野犬に襲われ治療のため再び渡日
2014年 東京芸術大学美術学部先端芸術表現科に入学
2016年 第15回写真1-WALLファイナリスト
2017年 第16回写真1-WALLファイナリスト
2018年 個展「フラグメント」福島
2019年 個展「記憶編移寫眞」台北
2020年 東京芸術大学大学院美術研究科に在籍